開発費とは、新規顧客の開拓や新技術の開発など、新しく何かを始める時に支出した費用です。
しかし、“費用”の項目ではなく“繰延資産”に定義されます。
日常の処理に使用しないので、経理部の社員でも目にする機会は稀かもしれません。
決算時に税理士等が使う、テクニカルな勘定科目です。
開発費は、他の勘定科目でも処理出来てしまいます。
例えば、新規開拓の為の費用は「広告宣伝費」、新技術の開発は「試験研究費」で処理することが出来ます。
これらは“費用”の科目です。
100万円使ったら、100万円全て、当期の経費になります。
では、開発費を使う意味とは、なんでしょうか?
開発費を使うと、決算時に費用計上する金額を調整することができるのです。
開発費は、まず“資産”(繰延資産)に計上されます。
その償却額は、損金の額に参入する(経費にする)事が出来るのですが、開発費として計上した額の20%以上であれば、自由に設定できます。
つまり、当期、開発費として100万円計上したら…
・100万円全てを経費に落とす
・20万円経費に落とし、80万円は資産計上する
・50万円経費に落とし、50万円を資産計上する
など、ある程度自由に経費計上する事が出来るのです。
儲けがあれば沢山の税金が発生し、赤字であれば最低限の税金以外は取られません。
開発費を上手く使い、経費に計上する額を調整すれば、節税になります。
では、株式会社山田商店を設立した場合で考えてみましょう。
株式会社山田商店の設立に際し、新しい事務所に荷物を運び入れたり、顧客開拓の為にチラシを印刷したり、500万円を使いました。
そして、1年目の売上は、150万円でした。
その他の経費に、50万円使いました。
翌期、2年目は経営が軌道に乗り、売上は700万円になりました。
年間の経費は300万円でした。
開発費を使わず、引越代は「支払手数料」や「荷造運賃」、チラシの印刷代は「広告宣伝費」など“費用”科目で処理してみましょう。
すると、こうなります。
<1年目>
売上 150万円
経費 550万円
<2年目>
売上 700万円
経費 300万円
1年目は400万円の赤字なので、税金はほぼゼロです。
しかし、2年目は400万円の利益が出ているので、当然、税金が発生します。
では、「開発費」を使うとどうなるでしょうか
開発費は守備範囲が広いので、引越代やチラシの印刷代など、ごちゃごちゃした費用は何でも開発費にしてOKです。
設立に関する費用500万円を「開発費」で計上し、1年目はその20%である100万円を償却、2年目に残り400万円全てを償却したとすると…
<1年目>
売上 150万円
経費 150万円(100万円+50万円)
<2年目>
売上 700万円
経費 700万円(400万円+300万円)
両年とも、売上と経費が同額なので、利益ゼロ。
税金はほとんど発生しません。
この「開発費」を使って税金を安くする処理は、脱税ではありません。
法に則って適正に処理しているので、節税です。
開発費は、決算書の見た目を良くする為にも使われます。
実のところ、赤字額が1億円でも1万円でも、税金は変わりません。
しかし、赤字額が大きすぎると、融資が受けられないなど、マイナスな現象が起こります。
そのため、開発費を使うことで、赤字になりすぎないように調節したりします。
とはいえ、開発費が沢山あるのは、実質マイナス評価です。
しかし、赤字の会社と、黒字だけどマイナス評価の会社では、どちらが良いでしょうか?
経営に関する不安を取り除く為に、決算書の作りを考えながら、常に最適な方法を選ぶ必要があります。
税理士の腕の見せどころです。