資金が不足した時に、他から借り入れるお金、いわゆる借金です。
借入先は金融機関に限らず、個人や企業からもあり得ます。
会社が社長(役員)から借り入れをしたら、役員借入金で処理します。
役員借入金は、銀行等からの外部借入とは違い、資本性借入になります。
中小企業の場合、ほとんどが「株主=役員」で、「会社≒役員」と言えます。
そのため、役員借入金は、借金というより、資本金に近い意味を持つのです。
資本性借入は、外から借りず、自分で何とか出来ている証です。
そのため、帝国データバンクや商工リサーチなどの与信調査で、良い評価を受けやすいという特徴があります。
もし、会社に銀行からの借入れがあり、社長の個人預金が余っているのであれば、社長のお金で銀行借入れを返済し、役員借入金にしましょう。
役員借入金にすることで、銀行への利息の支払いがなくなります。
2020年7月現在、銀行預金の利息はゼロに等しいですが、役員借入金の利息分は役員報酬として還元できます。
また、外部借入が減り資本性借入が増えることで、会社の評価が上がり、与信が付きます。
与信が付くと、色々な面でプラスになります。
そして、もし資金繰が上手く行かなくなった時には、銀行からも借入れしやすくなります。
一般的に、資本金が大きく、借入れが少ない会社が、良い会社と言われています。
では、次の2社(どちらも中小企業)のうち、どちらが良い会社といえるのか考えてみましょう。
A社 資本金1億円
B社 資本金1千万円
この2社は、どちらも会社運営に資産1億円が必要だとしましょう。
A社は無借金で運営出来ますが、B社は9千万円を借金しなければ運営出来ません。
つまり、
A社 資本金1億円
B社 資本金1千万円 + 借入金9千万円
という状態なので、A社の方が、良い会社だと考えられます。
しかし、別の角度から見ると、様相が変わります。
B社の借入れは、銀行からの借入れ(外部借入)ではなく、社長の個人資産からの借入れでした。
A社 資本金1億円
B社 資本金1千万円 + 役員借入金9千万円
役員借入金は、資本性借入なので“ほぼ資本金”です。
A社とB社の差は、ほとんどありません。
また、資本金が大きいと、均等割(法人住民税)が高くなるというデメリットがあります。
東京都の場合、均等割は、
A社 資本金1億円 → 18万円
B社 資本金1千万円 → 7万円
となりますので、A社はB社の倍以上の均等割を支払う事になります。
均等割は、会社が続く限り毎年一定額を支払う必要があるので、10年、20年単位で考えると、大きく差が出ます。
その他にも、税制面で違いが出てきます。
資本金1千万円以下の場合は税制優遇が取れますが、1億円だと取れません。
資本金が大きいA社の方が、色々な面で税金が高くなってしまいます。
そして、手持ちの資金が薄くなった時、資本金を取り崩すのはとても大変です。
資本金を減らす「減資」手続きには登記が必須で、登録免許税の他、官報公告を出したり、債権者に催告したり、手間もお金もかかります。
このように、中小企業の場合、トータルで考えると無駄がないのはB社です。
そのため、資本金が大きく無借金のA社より、役員借入金のあるB社の方が、良い会社だと言えるでしょう。
大企業になる必要がなければ、資本金は1千万円までに設定し、お金が無くなったら社長から借り入れる。
役員借入金を上手く使うことで、会社も社長もウィンウィンの状態が作り出せます。